鈴木 武
11
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名前 |
すずき たけし |
生年月日 |
1932年2月28日 |
経歴 |
鳴尾高−東洋レーヨン−近鉄−大洋 |
入団年 |
60年に近鉄から移籍 |
在籍年 |
60年−63年 |
背番号 |
60年−63年[11] |
投打 |
右投げ右打ち |
守備 |
内野手 |
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:近鉄入団:
51年の選抜高校野球で打率.611と大活躍し、社会人東洋レーヨンで1年プレーした後に近鉄入り。1年目から全試合に出場した鈴木は新人王こそ豊田泰光にさらわれたが、136安打を放ち打率.276、本塁打は2本ながら56得点、40盗塁と大活躍した。中でも40盗塁は、97年に小坂
誠に破られるまで44年間パリーグの新人記録だった。
:記録にこだわらない:
2年目の54年には5月20日阪急戦で二盗、三盗、本盗を連続して成功するパーフェクト・スチールを達成するなど、ますます快足に磨きがかかり、オールスター戦直後には60盗塁を達成し、夢のシーズン100盗塁すら可能な位置にいた。が、あるスポーツ誌に載った「記録にこだわる鈴木」という記事を読んだ鈴木はそれ以来ぱったりと走らなくなり、100盗塁どころかパリーグ記録の80盗塁にも届かない71盗塁に終わった。しかしそれでも71盗塁は歴代11位でもちろん盗塁王になった。入団2年間での111盗塁はプロ野球記録になった。
:名人:
南海の鶴岡監督は「鈴木よ。お前はホンマに盗塁がうまいのう。うちの木塚よりうまいで」と史上4位の通算479盗塁を決めた木塚 忠助を引き合いに出して声をかければ、当の木塚も「鈴木 武こそ名人」と声をそろえた。
:スパイク:
盗塁のコツを聞かれた鈴木は「このピッチャーは3回続けて牽制球は投げんと思ったら、それ行けとばかりに走るだけ。単なるヤマ勘ですよ」と言ったが、常に雨用のスパイクを持ち歩き、多いときには7足のスパイクを風呂敷に包んで持ち歩くなど足には細心の注意を払っていた。「スパイクに金をかけるのは、プロとして当たり前。小牛の皮で底皮が特別に薄く二月しか持たない。みんなより何倍もスパイクには金をかけたもの」、ちなみにイチローのスパイクは三日しか持たないらしい。
:骨折:
55年の開幕戦で荒巻淳と二塁ベース上で激突し、自慢の右足首を骨折してシーズンを棒に振った。翌年には復帰したが足が元に戻ることはなかった。
:巨人軍:
59年近鉄の監督に千葉茂が就任した。千葉は監督就任とともに巨人から何人かの選手を連れてきて、その選手たちをレギュラーとして扱った。当然だが鈴木たち近鉄生え抜きの選手たちの不満は高まっていった。「巨人から来た人たちは、何かといえば巨人軍ではこうだった。巨人軍ではそんなことはしない。といった言い方をする。それはいいとしても、なぜ巨人だけが巨人軍なのか?、近鉄軍、西鉄軍とは決して言わんのに。一番カチンと来たのはこの軍という言い方やったね」
:直談判:
ある日鈴木は近鉄生え抜き選手数人と千葉監督の部屋に向かった。鈴木が部屋の扉を開け「監督、お話があります」と言ったとき、後ろを振り向くと一緒に来たはずの仲間だった人たちは消えていた。鈴木はやむなく一人で監督室に入り、元巨人選手重視の選手起用などの不満を監督にぶつけた。千葉は頷いて聞いていたが、その後鈴木を待っていたのは二軍降格だった。
:大洋へ:
翌年になっても一軍と二軍を行き来する日々が続いていた。そんなある日、金銭トレードで大洋移籍が決まった。すでにトレード期限の4月30日は過ぎていたが、三原監督が「コミッショナーの許可があれば、その限りにあらず」の条項に目をつけて巨人の後輩である近鉄の千葉監督に声をかけて無理やりトレードを成立させたのだった。
:相乗効果:
6月9日に、「オッス、みんなよろしくな」と言って大洋に入団した鈴木はいきなりショートを守ることになった。当時の大洋には打撃がいいが守備のまずい麻生、守備は一級品だが打撃はからきしの浜中という二人のショートがいたが、はっきり言ってしまえば両者とも力不足だった。だが三原監督は鈴木をショートとして使うことによって、麻生を代打の切り札。浜中を代走、守備固め、と言うように二人を得意分野のみに専念させることで一気にチームの層を厚くした。
:クセモノ:
六大学などのエリート出身の選手が多かった大洋にあって、「プロ野球選手といっても、どうせ俺らは棒振り職人よ」と言ってはばからない鈴木の存在は大きな刺激となった。近藤
和彦が「ユニホームを着ているとき以外は、いつも競馬や競輪の新聞を読んでいるチャランポランな人でした。でもひとたびグラウンドに立てばとにかくしぶとい人。ずいぶん勉強させてもらいました」と言えば、土井
淳は「野球を良く知っていて、攻守にわたって抜群のセンスの持ち主。何を考えているか分からない、相手にすれば不気味だったと思いますよ」と語った。
:クセモノ2:
鈴木は2番バッターとしてしぶとい打撃を見せたかと思えば、勝負どころでは往年の快足で12盗塁を記録するなどチャンスを演出した。またショートの守備でも、打者によって守備位置を変えたり、するすると二塁走者の陰に回りこんで牽制球でタッチアウトにしてみせたりと、それまでの大洋では見られなかったプレーでたびたびピンチを救った。土井
淳は優勝直後に「鈴木 武の加入ほど地味だが大きな役割を果たしたものはないと思う」と語った。
:技能賞:
日本シリーズでは14打数3安打、打率は.214に過ぎなかったが、第二戦では6回裏に小野攻略のきっかけになった四球と、7回裏の決勝タイムリー、第三戦ではセンター前ヒットで出塁すると、二盗、三盗を決めて先制点を演出するなど数字以上の活躍を見せて技能賞に選ばれた。
:大洋OB:
98年に横浜の38年ぶりの優勝について訪ねられた鈴木は「横浜の38年ぶりの優勝?ワシは大洋OBやし、関係あらしません」と言って相変わらずのクセモノぶりを発揮していた。 |
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その他の記録 |
1イニング3盗塁:日本記録 |
54年5月20日阪急戦 |
日本シリーズ技能賞 |
60年 |
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53 |
54 |
55 |
56 |
57 |
58 |
59 |
60 |
61 |
62 |
63 |
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盗塁王 |
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● |
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1回 |
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打撃成績
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チーム |
試合 |
打数 |
得点 |
安打 |
二塁 |
三塁 |
本塁 |
塁打 |
打点 |
盗塁 |
盗刺 |
犠打 |
犠飛 |
四球 |
死球 |
三振 |
併殺 |
失策 |
打率 |
|
53 |
近鉄 |
120 |
496 |
56 |
136 |
20 |
6 |
2 |
174 |
36 |
40 |
13 |
19 |
2 |
19 |
1 |
34 |
8 |
42 |
.274 |
54 |
近鉄 |
132 |
536 |
78 |
136 |
19 |
2 |
2 |
165 |
38 |
71 |
18 |
17 |
0 |
22 |
1 |
21 |
10 |
44 |
.254 |
55 |
近鉄 |
3 |
11 |
1 |
4 |
0 |
0 |
0 |
4 |
1 |
0 |
0 |
0 |
2 |
0 |
0 |
0 |
2 |
2 |
.364 |
56 |
近鉄 |
133 |
431 |
54 |
105 |
14 |
2 |
0 |
123 |
17 |
37 |
13 |
32 |
2 |
28 |
2 |
50 |
10 |
40 |
.244 |
57 |
近鉄 |
95 |
323 |
39 |
89 |
9 |
1 |
3 |
109 |
23 |
23 |
10 |
14 |
1 |
19 |
1 |
29 |
4 |
16 |
.276 |
58 |
近鉄 |
105 |
342 |
30 |
79 |
4 |
3 |
1 |
92 |
17 |
30 |
16 |
11 |
3 |
18 |
4 |
42 |
7 |
17 |
.231 |
59 |
近鉄 |
121 |
380 |
26 |
91 |
7 |
4 |
0 |
106 |
23 |
15 |
4 |
11 |
0 |
8 |
3 |
41 |
6 |
32 |
.239 |
60 |
近鉄 |
20 |
44 |
4 |
5 |
1 |
0 |
0 |
6 |
1 |
0 |
0 |
5 |
0 |
0 |
0 |
4 |
0 |
4 |
.114 |
60 |
大洋 |
76 |
252 |
29 |
53 |
8 |
1 |
0 |
63 |
16 |
12 |
5 |
2 |
0 |
13 |
1 |
27 |
4 |
11 |
.210 |
61 |
大洋 |
127 |
345 |
28 |
82 |
8 |
1 |
1 |
95 |
24 |
12 |
7 |
5 |
0 |
16 |
0 |
42 |
8 |
26 |
.238 |
62 |
大洋 |
117 |
257 |
12 |
53 |
6 |
0 |
0 |
59 |
14 |
2 |
2 |
10 |
0 |
6 |
0 |
30 |
2 |
12 |
.206 |
63 |
大洋 |
82 |
190 |
13 |
42 |
4 |
1 |
0 |
48 |
4 |
4 |
2 |
6 |
0 |
8 |
1 |
18 |
5 |
16 |
.221 |
13 |
球団 |
4年 |
402 |
1044 |
82 |
230 |
26 |
3 |
1 |
265 |
58 |
30 |
16 |
23 |
0 |
43 |
2 |
117 |
19 |
65 |
.220 |
|
通算 |
11年 |
1131 |
3607 |
370 |
875 |
100 |
21 |
9 |
1044 |
214 |
246 |
90 |
134 |
10 |
157 |
14 |
338 |
66 |
262 |
.243 |
|
|
日本シリーズ打撃成績
|
チーム |
試合 |
打数 |
得点 |
安打 |
二塁 |
三塁 |
本塁 |
塁打 |
打点 |
盗塁 |
盗刺 |
犠打 |
犠飛 |
四球 |
死球 |
三振 |
併殺 |
失策 |
打率 |
|
60 |
大洋 |
4 |
14 |
3 |
3 |
0 |
0 |
0 |
3 |
1 |
2 |
0 |
2 |
0 |
1 |
0 |
1 |
0 |
0 |
.214 |
|
通算 |
1年 |
4 |
14 |
3 |
3 |
0 |
0 |
0 |
3 |
1 |
2 |
0 |
2 |
0 |
1 |
0 |
1 |
0 |
0 |
.214 |
|
|
|